2012年 10月 01日
オーディションの日 |
2012年5月下旬、オーディションの日となった。会場のデイビス・シンフォニーホールへ向かう。いつもの表玄関ではなく、脇にある「アーティスト専用入り口」から入る。開始時間よりも随分早く着いてしまった。警備員に用件をつげ、地階にある部屋へ。受付で名前をいい、殺風景なうす暗い廊下で順番を待つ。この日はユースオーケストラのオーディションもあるらしく、大きな楽器を持った十代の若者も廊下を歩いている。

オーディション第1部はコーラスのアシスタントディレクターによる初見のテスト。名前を呼ばれた。いよいよだ。コーラスマネージャーのエレインに狭い部屋へ誘導される。人懐っこいニコニコ顔の副指揮者のデビットに迎えられて、少し安心。
「では音域をみますので、ピアノに合わせて声を出してください。」
いろいろな音域の声を出して、上も下もA、2オクターブなんとか出せた。上のG辺りで苦しくなってきたらデビットが心配そうな顔をしたのがおかしい。この人は本当に人が良さそうだ。
「では、そこに置いてあるバインダーの2ページを開いてください。」
初見用の楽譜の入った分厚いバインダーのページを指定され、いくつか歌わされる。何カ所か間違った音で歌ったが、
「あ、ここはこの音ね。」
と親切にもピアノで正しい音を教えてくれて、もう一度歌わせてくれた。最後に音楽理論の質問をされたが、質問の意味も分からないほど???状態で、降参。『こりゃ、だめかも・・・』と思ったが、何とも幸運なことにオーディションの第2部へ進むことができた。
だだっ広い部屋へ通されると、コーラス指揮者のボーリン氏とピアノの伴奏者が待っていた。グランドピアノの前に楽譜立てが置いてあり、そこが私の指定席らしい。まずは私が用意してきた曲を歌うように言われる。イタリア歌曲を用意していたのだが、実はこの曲はつい2週間程前に、私の声楽の先生であるキャシー先生の生徒を集めたリサイタルで歌った曲なので、かなり歌い込んで暗譜もしていた。緊張していたが、ここまでくるともう逃げも隠れもできない。ゆっくりとお腹に息を入れて、歌い始めた。リサイタルとは違って、観客はボーリン氏一人。どこに視線を向けて歌ったらいいのいか多少戸惑いながら、それでも楽譜は見ずに歌っていたのだが、あと数小節で終わりというときにいきなり頭の中が真っ白になってしまった。下手に暗譜していたのが仇となり、目の前の楽譜も目に入らない。数秒間、しーんとしていたと思う。悪いことに、ここは私が歌い始めないとピアノが入れない部分。見かねた伴奏者が続きを弾いてくれて、それに着いて行く形でなんとか歌い終わることができた。冷や汗もの!大失敗!!これでもうオーディションは強制終了かと思いきや、ボーリン氏は何事もなかったかのように立ち上がり、私の楽譜を覗き込んで言うのだった。
「えっと、ここの部分をもう一度歌ってみてくれる?」
「もっと奥を広げる感じで歌ってみて。」
「オーの発音はもっと深くしてみて。」
まるでレッスンみたいである。この調子で課題曲の2曲のアルトのパートも無事歌い、これですべて終わったかと一瞬ほっとしたのだが、
「ああ、ちょっと、これも歌ってみてくれます?」
と、ひらひらと一枚の楽譜を持ってきた。見るとドイツ語の楽譜。初見でそれもドイツ語でアルトのパートをピアノに合わせて歌わされた。
「オーの発音はもっと深いんですよ。」
と最後にだめ押しされ、それでオーディションは終了した。
楽譜の片付けをしている私に、ボーリン氏はいろいろと話しかけてくれた。私が日本人だと知ると、
「僕は少林寺拳法をするんです。」
と、嬉しそうに話していた。ちなみに彼は黒帯である。
大失敗はしたけれど、なんとなく手応えも感じられたオーディション。レッスンのように勉強になったし、楽しめたのが何よりだった。結果が分かるのは約3週間後だ。

オーディション第1部はコーラスのアシスタントディレクターによる初見のテスト。名前を呼ばれた。いよいよだ。コーラスマネージャーのエレインに狭い部屋へ誘導される。人懐っこいニコニコ顔の副指揮者のデビットに迎えられて、少し安心。
「では音域をみますので、ピアノに合わせて声を出してください。」
いろいろな音域の声を出して、上も下もA、2オクターブなんとか出せた。上のG辺りで苦しくなってきたらデビットが心配そうな顔をしたのがおかしい。この人は本当に人が良さそうだ。
「では、そこに置いてあるバインダーの2ページを開いてください。」
初見用の楽譜の入った分厚いバインダーのページを指定され、いくつか歌わされる。何カ所か間違った音で歌ったが、
「あ、ここはこの音ね。」
と親切にもピアノで正しい音を教えてくれて、もう一度歌わせてくれた。最後に音楽理論の質問をされたが、質問の意味も分からないほど???状態で、降参。『こりゃ、だめかも・・・』と思ったが、何とも幸運なことにオーディションの第2部へ進むことができた。
だだっ広い部屋へ通されると、コーラス指揮者のボーリン氏とピアノの伴奏者が待っていた。グランドピアノの前に楽譜立てが置いてあり、そこが私の指定席らしい。まずは私が用意してきた曲を歌うように言われる。イタリア歌曲を用意していたのだが、実はこの曲はつい2週間程前に、私の声楽の先生であるキャシー先生の生徒を集めたリサイタルで歌った曲なので、かなり歌い込んで暗譜もしていた。緊張していたが、ここまでくるともう逃げも隠れもできない。ゆっくりとお腹に息を入れて、歌い始めた。リサイタルとは違って、観客はボーリン氏一人。どこに視線を向けて歌ったらいいのいか多少戸惑いながら、それでも楽譜は見ずに歌っていたのだが、あと数小節で終わりというときにいきなり頭の中が真っ白になってしまった。下手に暗譜していたのが仇となり、目の前の楽譜も目に入らない。数秒間、しーんとしていたと思う。悪いことに、ここは私が歌い始めないとピアノが入れない部分。見かねた伴奏者が続きを弾いてくれて、それに着いて行く形でなんとか歌い終わることができた。冷や汗もの!大失敗!!これでもうオーディションは強制終了かと思いきや、ボーリン氏は何事もなかったかのように立ち上がり、私の楽譜を覗き込んで言うのだった。
「えっと、ここの部分をもう一度歌ってみてくれる?」
「もっと奥を広げる感じで歌ってみて。」
「オーの発音はもっと深くしてみて。」
まるでレッスンみたいである。この調子で課題曲の2曲のアルトのパートも無事歌い、これですべて終わったかと一瞬ほっとしたのだが、
「ああ、ちょっと、これも歌ってみてくれます?」
と、ひらひらと一枚の楽譜を持ってきた。見るとドイツ語の楽譜。初見でそれもドイツ語でアルトのパートをピアノに合わせて歌わされた。
「オーの発音はもっと深いんですよ。」
と最後にだめ押しされ、それでオーディションは終了した。
楽譜の片付けをしている私に、ボーリン氏はいろいろと話しかけてくれた。私が日本人だと知ると、
「僕は少林寺拳法をするんです。」
と、嬉しそうに話していた。ちなみに彼は黒帯である。
大失敗はしたけれど、なんとなく手応えも感じられたオーディション。レッスンのように勉強になったし、楽しめたのが何よりだった。結果が分かるのは約3週間後だ。
by makikosf
| 2012-10-01 10:04
| 交響楽団コーラス